この雪がとけるまでは

 七年ぶりの積雪だという。やけに静かな早朝六時、スマホには休校の知らせと幼なじみからの集合メッセージ。どうせ近所だからとスウェットにダウンを着込んで家を出る。

 待ち合わせ場所はいつもの空き地。七年前と違って、土地の半分が他人の家になり、広さは半分になってしまった場所。彼女は俺の姿を見るなり顔をほころばせた。ばしばしと俺の腕をたたき、七年前とおなじだね! と言う。

 同じなもんかばかやろう。だっておまえ、おんなになっただろ。しかも他人のおんなに。俺だって男になった。おまえの男じゃないけど。また、雪鳴らして遊ぼうよ、彼女の言葉に口角を上げて、ああ、と返した。

 それから俺たちは、日が暮れるまで雪を鳴らして歩き回った。昼にはいったん止んだ雪も、夕方になってまた降り出した。周囲の音が雪に吸収され、おそろしいほど静かな世界がそこにあった。世界には俺とこいつしかいないのかもしれない。

 割と真面目にそう思ったとき、地面がチカチカと光った。スマホだ。着信通知を見て気分が悪くなった。こいつの彼氏の名前。どうやらこのスマホの主は自分のスマホの所在に気づいていないらしい。さりげなく背に隠すようにして足で雪の中に埋めてやった。

 もう遅いし、帰ろうぜ。なあ、今日久しぶりにおまえの家行っていい?

 

 この雪がとけるまでは、どうか。

 

2017.3.8 

odaibakoでいただいた「とける」というお題で書きました。

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